雲のむこう、約束の場所 感想04

ネタバレにならない範囲で書きますが、暗く厳しい精神状態にある男の子の様子がイントロとして語られ、そこから過去へとさかのぼる構成にはちゃんと意味があるのです。意味、というよりも「効果」かしら。頼む、わかってくれ!(^^) ←ひとりごと 
新海誠は、ほんとに冗談抜きでベルイマンヴィスコンティアンゲロプロスやドン・アスカリアンら世界的な作家にまさるとも劣らぬスーパーデューパーな映像的才能の持ち主ですが、少なくとも「雲のむこう、約束の場所」で発揮されている熱きドラマ魂はいたって古典的で、インテリゲンチャではなく大衆のほうをむいているのが、わたしにはたいへんにありがたい。前述の作家たちのように、レベルの高い受け手だけを想定するのでなく、芸術映画のテクニックをもって下世話といっても良いくらいの大衆芸能に徹してくれていることをほんとうにうれしく思います。「雲のむこう、約束の場所」は、あらすじを語ったらコっぱずかしくてきゃーっと飛び上がりたくなりますが、表現のしかたがなんたってもうハイレベルだもの、はずかしさが逆に良いほうに作用するのです。
インテリゲンチャや批評家にホメられようとする欲望の発露を作品から意識的に排除できる」ことも、新海誠の才能のひとつと思います。新海監督は、その気になればいつだって、ウェブで公開されている初期短篇のような、インテリ好みのものもつくれるわけですから。


↓完全復刻! 復刊ドットコム限定販売。これ、なんかすっごく気になるんですけど。
セーラー服をあなたに 竹本泉(イラスト)
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