あれっ、「タイドライン・ブルー」? 「トゥモロー・ワールド」

TVCMを見たときはピンとくるものがなにもなかったのです。なんかつまんなそー、とか思いました。原作小説が「女には向かない職業」で有名なP.D.ジェイムズでしょ? 「えーっ推理作家が手遊びで書いたSF小説? ますますつまんなそー。ブー」とか。←すごい偏見 しかし。知人であるヴァイオレンス小説家、深見真(ふかみまこと)の熱い感想トークをじかにふむふむと聴いたり、mixiでの岡野キャプテン(放送作家)の日記をチラと読んだりしているうちになにやらムクムクと見る気が起きてきて、書肆で買った前売り券を握り締めて行って参りましたよ「トゥモロー・ワールド」(原題『CHILDREN OF MEN』)。……仰天。傑作ですこれ。1時間49分が、あっ! という間。濃密。戦闘シーンだけに限っても見る価値がある。音楽もとても良い!


でも宣伝しづらい映画だったろうなーこれ。どーやってもこーやってもデート・ムービーにはならんですものね。わたしが見たときは木曜18:40〜の回でしたが劇場はガラガラでした。


2009年に世界で猛威を振るったインフルエンザが原因? と思われる、全人類が生殖能力を失った事件から18年たった未来が舞台。世界のほとんどが崩壊し、英国だけは強固な鎖国政策のおかげかかろうじて治安を保っている状態。主人公である高級官僚のセオは、反政府組織のリーダーとなっているかつての妻から、ある不法入国少女のための通行証入手を強要される。いまだ妻への思いを断ち切れずにいると思しきセオは、不承不承同意したものの、その結果、大きな危機にさらされるはめに……。


いやほんと参りました。映像が一片の無駄なく、どれもこれも魅力的。アリモノを使ったそうですけど、クルマのデザインがまたいいんだよね。ストーリー自体はいたってシンプル。ですが、生命というものはなんと大きな祝福を受けるのだろう、いや受けるべきなのだ、という大きな感慨を得られます。
セリフによる説明があまりないので、世界観は観客による想像にゆだねられる部分も多いのですが、「ひたすら武力から逃避しつつ新たな生命を守る」という題材と、「人間の信念の尊さ」というテーマがピタリと一致した佳作です。臨場感のある映像が魅力ですので、DVDを待たず、ぜひ劇場でご覧ください。


以下、参考にさせていただいたサイトを記します。
伊藤計劃:第弐位相
http://d.hatena.ne.jp/Projectitoh/20061127
↓アヌトパンナ・アニルッダ
http://d.hatena.ne.jp/anutpanna/20061201


↓以下ネタバレ含みます。ご観賞の後にお読みください。




主人公セオと文化大臣が会話している際に、窓の外にバターシー発電所が! そして煙突のそばにはもちろんピンクのブタの風船が浮かんでいる! これってピンク・フロイド「アニマルズ」のジャケットじゃん! 監督はほんとにプログレッシブ・ロックがお好きのようだ(^^)。「クリムゾン・キングの宮殿」も使われてるし。ほかにも「ルビー・チューズデイ」や「ハッシュ」といったナツメロに涙をそそられる。サントラが欲しいです。

もろにヒッピーな風貌だったので、マイケル・ケインが出演してることにまったく気づきませんでした。鈍いねわたしも。

妊婦さんを守る話、ときたならば、はっ、これはTVアニメ「タイドライン・ブルー」?(^^) いやマジで、若い妊婦さんを守りつつ逃避行→助産婦や医者に頼らず自力で出産→今度は母子を守る旅……だから、基本のストーリー・ラインは同じですよ(^^)。