日曜日 山百合の園

ライトノヴェル以上のドキドキとちょっと過激なヴィジュアルを! 知的なあなたの官能にうったえる、まんが&小説の雑誌、コミックメガドリーム10月号、絶賛発売中なのです! よろしくお願いします。読めばあなたも、豪奢な薔薇のつぼみの『妹』(プティ・スール)に! ……またひとさまの創作物を使ってしまって……申し訳ありません、みなさま。

きのうの江戸川乱歩映画祭といえば、コミックメガドリーム10月号掲載、匿名1号氏によるコラム「君代知るや日本の名作」で、乱歩の「孤島の鬼」が取り上げられています。わたしは一読して、ううむ、とうなってしまいました。みなさんもぜひお読みください!

薄曇り。風があるのでなんぼか涼しい。

「SHOWBIZ TODAY」チラと見る。こッ……これは米国版「DEATH NOTE」ッ!? ベン・キングズレーの出ている「SUSPECT ZERO」というサスペンス映画がすっごくおもしろそうでした。

特別読み切り短篇小説:君子はみてる、山百合の園 ●贋作:水樹剣正●

「あいや、待たれい」
手入れのゆきとどいた松の先にある二股の分かれ道で、祐巳は背後から呼び止められた。孔子廟の前であったから、一瞬孔子様に呼び止められたのかと思った。
「──」
祐巳は身体全体で振り返ったとたん絶句してしまった。凛とした声にふさわしい、美しい顔の貴人がそこにいた。
「あの……。私にご用でしょうか」
「うむ、呼び止めたのは私で、その相手は貴公。間違いない」
祐巳の頭の中は恐慌状態となり、思わず腰が引けた。
「待たれと申しておる」
貴人は微笑みながら、手にしていた刀を祐巳に手渡すと、両手を祐巳の首に近づけた。
(あれ──!)
「貴公、領巾が曲がっておるな」
「えっ?」
「身だしなみは大切である。孔子様が見ていらっしゃるからな」
貴人はそう言って、祐巳から刀を取り戻すと、「ごきげんよう」を残して先に城門に向かって歩いていった。
(あれは……あのお姿は……間違いないわ)
百戦錬磨を誇る美貌の武将、小笠原祥子(しょうりゅうげんしょうし)さま。通称『紅薔薇将軍珠蕾』(こうしょうびしょうぐんしゅらい)。全軍のあこがれの的。
(そんな……)
祐巳はしばらく呆然と立ちつくしていた。
……福沢祐巳(ふくたくゆうし)。のちに『紅薔薇将軍珠蕾小妹』(こうしょうびしょうぐんしゅらいしょうまい)となり、戦場においては破軍蛇矛をふるって八面六臂の活躍で猛将の名をほしいままにするが、このときはまだ一兵卒にすぎなかった。
孔子様の意地悪。
そんな祐巳の抗議など意にも介さぬふうに、孔子廟は、いつもと変わらずお庭の中にひっそりと立っていた。